長く寒い冬は、コンサートやオペラ、演劇が充実する季節です。この冬はロックダウンも短かったので、しっかりした対策の元、オペラなど良く通うことが出来ました。ここで紹介するのは、2月の出来事です。
2月2日、国立歌劇場はブリテン作曲の英語のオペラ「ピーター・グライムズ」でした。
出演中の人気歌手二人と指揮者が賞をもらった日でした。が、驚くことがあったのです。感染力の強いオミクロン株のころで、前日に合唱団に感染者が出て、この日は急きょ合唱団を他と入れ替えたのです!! 専属は国立歌劇場合唱団、代わりを務めたのはアーノルド・シェーンベルグ合唱団で、上演を救うことになりました!!
私のそれでも割と長いオペラ通いで、急な合唱団入れ替えは初めてです。この作品はそう多く上演もされません。幸いアーノルド・シェーンベルグ合唱団が去年10月に歌ったばかりだったのです。が、たった1日で、振り付けや、衣装は!?!?!? まったく驚き。そして鮮やかに成功!! 彼らは(たぶん人数もやや少なかったのに)非常にうまいのです!!!
この合唱団は別の歌劇場、テアター・アン・デア・ウィーンの合唱団です。ああ、残念、こちらの10月の「ピーター・グライムズ」も観ておくんでした。
さてさて、2月22日にその劇場からのメールで、この合唱団の創設50周年記念コンサート「ハレルヤ」のお知らせが来ました。それも、翌日!! 慌ててチケットを購入。
(写真:テアター・アン・デア・ウィーン)コンサートは、ヘンデルの「ハレルヤ」で始まって、「ハレルヤ」で終わりましたが、他は合唱団がこの劇場で歌った曲でした。例えば、ここで初演されたベートーヴェンの「フィデリオ」。その興行収入でシカネーダーがこの劇場を建てたモーツァルトの「魔笛」。もちろん、国立歌劇場を助けた「ピーター・グライムズ」などなど。
このアーノルド・シェーンベルグ合唱団はコンサート合唱団として結成され、この劇場では2006年から、110余りの新演出も歌い、思い出せば、指揮者のアルノンクール率いるオーケストラ、コンチェントス・ムジクスとも歌ってきましたよね。
創設者で指導者、この日の殆どの指揮もしたオルトナー氏のお話では、「この合唱団には3本の柱がある、オペラ、オーケストラとのコンサート、そしてアカペラ」とのことです。
さて、このコンサートの司会者の話から、この劇場テアター・アン・デア・ウィーン自身が、もう直ぐ改修工事のために2年間閉館すると!!(えぇ!?) しかも、この時上演中だったヤナーチェク作曲の「イェヌーファ」の、私たちがチケットを持っている日は、閉館直前、まさしく最終日だったのです。
2月28日、「イェヌーファ」、今度はチェコ語のオペラです。これも、演出、音楽、ソロ、そして合唱(もちろんアーノルド・シェーンベルグ合唱団)ともに素晴らしかったです。カーテンコールでは合唱団のメンバーがウクライナの国旗を持って登場、大きな拍手を受けました。劇場とは2年間のお別れです(上の写真は、この日のものです)。
テアター・アン・デア・ウィーンは、旧市街の小さい歌劇場カンマー・オペラを数年前から傘下に入れています。カンマー・オペラはそのまま続き、工事中のテアター・アン・デア・ウィーンの部分は来シーズンからミュージアム・クゥオーターで上演予定とのことです。
テアター・アン・デア・ウィーンについては、2021年12月4日に紹介記事があるので、良かったら、どうぞ、ご覧ください。 井上 元子