地下鉄 4番線(U4)ハイリゲンシュタット駅前にやけに大きな建物があります。
横長過ぎてとても目には入りきりません。
何といっても長さが約1km ほどありますので。
当然いくつもの棟に分かれていて、見通しはききません。
左奥の建物の向こう側にも、右手前のほうも、まだまだ続きます。
日本からウィーンを訪れるお客様ですと、例えばベートーベンゆかりの地を訪れる際、
「ハイリゲンシュタット遺書の家」(ベートーベン博物館)や
ベートーベンの散歩道のついでに目にされる(された)方も多いと思います。
この巨大な建物が「カールマルクス・ホーフ」と呼ばれる市営集合住宅です。
1918年帝政終焉後のウィーンの政権は社会民主党が担いました。
通称「赤いウィーン」の始まりです。
ですから名称も「カール・マルクス宮」だったりするんですね。
当時、住宅難の緩和・解消、雇用の確保・創出のために、
数多くの市営住宅が建てられましたが、これはその中で最大のものです。
全長1km(超)ですよ!
約100年前の建物ですし、基本は労働者階級の人々用の住宅ですので、
外観が今日的美意識にそぐわない等の難点がなくはないのですが、
それでもやっぱりすごいのは、この集合住宅が、
居住者のための洗濯場や浴場(当時の人々の衛生意識をご想像ください!)、
幼稚園や子供の遊び場・図書館等を備え、さらには敷地内に多くの緑を残した、
コンセプトとしてはとても今日的-機能的かつ人間的-なものであることです。
都市計画、(住宅)建築等に興味のある方は一度見ておいて損はありません。
今は興味がない方も、これをきっかけに興味をもつかもしれません。
ぜひ一度ご覧ください。
大渕元子