先日、同僚がフォルクス・オーパーでの「マイ・フェア・レイディ」に誘ってくれました。私には久しぶりの「マイ・フェア・レイディ」です。
フォルクス・オーパーVolksoperは、ここ首都のウィーンの2つ目の国立の歌劇場で、主にオペラ、オペレッタ、ミュージカル、バレエを、10か月のシーズン中ほぼ毎日上演します。上の写真の左下に、もう去年、コロナ対策で外に切符売り場が作られました。このオペラハウスは小ぶりなので、玄関のホールが人でいっぱいになるのを避けるためです。
全てのチケットに名前と電話番号を登録するので、当日のチケット購入やピックアップには時間がかかります。前もって手前の台で登録用紙にこれらを書き込んでから、係に渡します。外からの入場口も、座席ごとに分けて決まっています。さて入場しましょう。
正面は鉄製の幕です。鉄の幕の役目は防火です。20世紀の初めまで、照明などが熱くなり舞台から火事が発生することがありました。この鉄の幕を火災発生から数秒で降ろすことによって、客席を曇る設計です。この幕の絵は、フォルクス・オーパー100周年に、創設1898年のオリジナルの幕が描かれました。上の写真は上の階からですが、見ていただくと、左の円形の中に1848、右には(見えにくいですが)1898と書かれています。フォルクス・オーパーは皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の在位50周年記念で、国民(フォルク)のために創られました。1848年はフランツ・ヨーゼフが皇帝に即位された年、1898年は50周年で、ここが開設した年です。が、この年に皇后エリザベートが暗殺され、皇帝はオープニングにはいらっしゃれませんでした。1989年の100周年は私自身も体験しましたが、素晴らしい行事でした。
写真は、オーケストラ・ボックスを背にして、観客席を見たところ。さて、フォルクス・オーパーは国民・庶民のためのオペラハウスなので、原則、誰もが分かる母国語・ドイツ語で何でも上演します。つまり「カルメン」も「椿姫」もドイツ語、もちろん「マイ・フェア・レイディ」もドイツ語です。
つまり、つまり、ヒギンズ教授はパーフェクトなドイツ語を話し、イライザは初めこちらの下町言葉で話します。
それで、今でも私は、ヒギンズ教授が言っていることは良く分かるのに、イライザと仲間の会話は分からない部分が多い。コロナの今、観客は地元客がほとんどで、下町言葉の会話にどっと笑いが起こる、残念、私は理解できなくて笑えない時がある。
イライザの発音の練習で、有名な「スペインの雨は・・・・」ですが、あれは英語なので、直訳では練習にになりません。イライザのドイツ語の練習は、
Es grünt so grün, wenn Spaniens Blüten blühen.
固く直訳すると、スペインの花が咲く頃、とても緑に芽吹く・・ってところでしょうか。難しいウムラウトの"ü"の練習を、"rü" と "lü" で区別してやるわけです。(この「花」は木に咲く「花」です。)
ミュージカルはセリフも歌も聞き取りやすいです。また「マイ・フェア・レイディ」はとても良いミュージカルだし、こちらに住み始めて語学学校に通っていた頃、何回も見に行きました。行くごとに、聞き取れる部分が増えます。短期間で語学がそんなに向上するわけないのに、繰り返し聞くことは効果が出るもんですね。当時、嬉しくなりました。懐かしいなぁ。(でも、いまだに下町言葉は良く分からない。)
さて、今回はタイトルに「ミュージカル」とつけたので、今シーズン(2021年9月から2022年6月)フォルクス・オーパーでかかるミュージカルをご紹介しましょう。新しい時代のオペレッタはミュージカルとの境目で、ミュージカルにも近いので、これも含めますね。
(★は新演出)
-マイ・フェア・レイディ My Fir Lady (9月と11月)
-★ロキシィと奇跡のチーム Roxy und ihr Wunderteam (オベレッタ)(9月と10月)
-オズの魔法使い Der Zauber der Oz (9月と10月)
-天国の扉のアクセル(と訳せばいいか?)Axel an der Himmerlstür(オベレッタ)(11月)
-★Lady in the Dark (Kurt Weil作) (12月と1月)(興味津々)
-キャバレー Cabaret (2月と3月)
-キス・ミィ・ケイト Kiss me, Kate (2月と3月)
-★ラ・カージュ・オ・フォール La Cage aux Folles (3月から6月)(懐かしい!)
-森へ(って訳していいのか?) In to the Woods (4月と5月)
-5つ目の季節 Die fünfte Jahreszeit (5月と6月)
ドイツ語でミュージカルはいかがですか? 井上 元子