オーストリアでは、この冬のロックダウンが2週間になろうとしています。今回は、ロックダウンの前の週に見たオペラとその劇場、テアター・アン・デア・ウィーンをご紹介しますね。
オーケストラはウィーン交響楽団 Wiener Symphoniker。音楽の都と呼ばれるウィーンで、ウィーン・フィルハーモニーに次ぐオーケストラと言われます。ちょうどこの時期、そのウィーン・フィルは日本に演奏旅行中でした。
この劇場の名前 Theater an der Wien は、Wien(ウィーン)川のほとりの劇場という意味です。19世紀末の灌漑工事で、この辺りでは小さなウィーン川は地下を流されて、その上にナッシュマルクトNaschmarkt(生鮮食料品の市場で人気)がかぶさっています。それで劇場は今、(川の上なので)長細い市場の横にあります。
この日の演目はカタラーニ作曲の「ラ・ヴァリー」(1892年)、私には全く初めてのオペラですが、原作の小説が有名だそうです。主役のヴァリー(ソプラノ)は強い女のタイプで、カッコいいです。
初めての作品と、ほとんど知らない若い歌手ばかりでしたが、それぞれが役に合っていて、とても良く歌えていたと思います。
指揮はこのオーケストラの首席指揮者のオロツコ=エストラーダで、写真はオーケストラ・ボックスのメンバーを立たせて、ともに拍手を受けているところです。
さて、この出し物は、後半が11/22からの今のロックダウンにかかってしまいました。ロックダウン中も、リフレッシュと健康維持のためのお散歩は許されているので、先日また、この劇場の外観の写真を撮りに行ってきました。(運動不足解消で歩いて。)
この劇場は、モーツァルトの最後のオペラ「魔笛」の台本を書いて、モーツァルトに作曲を依頼して、自ら主役のパパゲーノを演じた劇場支配人のシカネーダーEmanuel Schikanederが、その後「魔笛」などの収益で建てさせた劇場です(1797-1801)。
こちらは「フィガロと探偵達」、6歳以上のお子さん用の「刑事物オペラ」(!?)と。もちろん、曲はモーツァルト、ほほう。
次は、パパゲーノ門の近くのプレートです。下の部分に「ベートーヴェンがここで暮らして(1803-1804年)、唯一のオペラ「フィデリオFidelio」や交響曲3番(エロイカ)、クロイツェル・ソナタなどの一部もここで作曲し、そのオペラやほかの曲もここで初演された」と書かれています。
この劇場の側面(パパゲーノ門の側)は「ミレカー小道」、後方(楽屋口の側)は「レーハー小道」と、どちらもオペレッタの作曲家の名前が付いています。19世紀後半、ここではヨハン・シュトラウスのものをはじめ、たくさんのオペレッタが初演されたのです。
(初演作品リストは、驚くほどですよ。)
この劇場の歴史は山盛りなくらいです。
が、私にとって(観光客時代を入れて1989年から)最初、この劇場はウィーンで一番良いミュージカルの劇場で、初夏のウィーン芸術週間にだけ、ヘンデルやモーツァルトなどあまり重くないオペラを上演していました。
それでミュージカルの「エリザベート」も「モーツァルト」も、ここで初演されました。
モーツァルトの生誕250周年(2006年)に、ここはオペラハウスに戻り、1年目はモーツァルトばかり、2年目はバロック・オペラばかり上演しました。これらはこの劇場の古さと規模にぴったりで、特徴を持って、建物も大きい国立歌劇場と上手く違いを出したと思います。その後は、いろいろな作曲家のオペラとコンサートがかかっています。
さて、後半の外観の写真を撮りに行ったのは、今週、ロックダウン中です。が、パパゲーノ門の近くでは、奥から何やら音が聞こえてきました。観客を入れた上演はできなくても、劇場は活動しています。早く、安全に再開されることを希望するばかりです。
皆様も、どうぞ、健康にお気をつけて!! 井上 元子