「飲む注射」事件

2021/06/25

ウィーンワイン コロナとウィーン 雑記

現在オーストリア・ウィーンでもコロナ予防接種がどんどん進んでいます。
今日から12~18歳までの若年層も接種(少なくとも受付)可能になりました。

チクッとやってコロナにバイバイ

なんてキャンペーンをやっています。



3月のウィーンは今よりずっと鬱々していました。
ロックダウン中(ロックダウン疲れ)、飲食店もレジャー施設も全休、
ワクチン供給の遅れも問題となっていました。

そんな中ウィーンのワインメーカーが地元フリーペーパーとタッグを組み、
「飲む注射」(ラベル名)という白ワインを売り出しました。

あくまでもワイン(ぶどう酒)ですので、もちろん感染予防効果等はありません。
世間は注射液不足が問題になってるけど、これ(ワイン)なら十分あるし、
飲食店は閉まっていても宅飲みにどうぞ
こんなときだからユーモアを忘れずに、ユーモア(飲んで)でパンデミックに立ち向かおう
そんな趣旨だったと思います。

さすが酔っ払いオーストリア人! と私は感心したのですが、
4月上旬、

この白ワインが当局に没収されました!

というニュースにびっくり

何ぞヤバいものでも混入していたのか?と思いましたが全然違いました。
※ちなみに有機無農薬ワインをつくっているワインメーカーです。



「押収」札が貼られたワイン © LENIKUS



問題となったのはワインのラベル、「飲む注射」というネーミングです。
世間に(医薬効果があるような)誤解を与えるというのです。
言い訳に使う人がいないとは言い切れませんが、最初からパロディだよって言っているんですけどね。

実際のところは、薬事法・医事法で医薬品のような単語(例えば「注射」)
をつかうことが禁じられているからということのようですが、
各テレビ局のニュースで、インターネットニュースで、あっちこっちで

何と無粋な!

とあげつらわれることに。


感心したのは、ワインを没収されたワインメーカーも負けてはおらず、ラベル名を

飲む注射検閲済

と変更し、騒ぎを活かしたマーケティングに転換したことです。



没収前のラベル(左)「飲む注射」と変更後のラベル(右)「検閲済」 © LENIKUS
※「検閲済」という赤スタンプで「注射」という単語を消している




この機転も「ウィーン子」ならでは
お見事でした!


ちなみにワインはもう一つあり、そちらのネーミングは「ウィーンの注射」
この「注射」にはウィーンのスラングが使われていて、どこでも通用するドイツ語ではないという理由でお咎めなしでした。


「ウィーンの注射」(左)と「飲む注射(検閲済)」(右)© LENIKUS





大渕元子