ハプスブルク家の皇女とグスタフマーラーに愛された街クラーゲンフルト・アム・ヴェルターゼー

2022/11/22

雑記 州ケルンテン 歴史

ケルンテン州の州都クラーゲンフルト・アム・ヴェルターゼー

世界遺産の旧市街にあり、ウィーンを訪れる全ての観光客の方々が訪れるメイン通りが
ケルントナー通り。オペラ座とシュテファン大聖堂を繋ぐ道は、歩いて10分程度の歩行者天国です。
<ケルンテンに続く道>から通り名が意味するように、ケルンテン州はイタリア方向へ向かうウィーンから約300キロほど離れた場所にあり、お車で3時間半、電車だと4時間ほどで到着です。
イタリア、スロベニアと国境を接しているケルンテン州の州都は、人口10万人ほどのクラーゲンフルト。
ウィーンといえば、シェーンブルン宮殿の名が出てくる様に、クラーゲンフルトと言えばヴェルター湖。
この湖とクラーゲンフルトの旧市街の間を約4キロの運河が繋いでいます。
美しい秋の紅葉を映し出す運河の並木道は、市民の散歩道としても親しまれており、幾つもの橋の中には16世紀の石の丸橋があり、日本で有名な長崎の眼鏡橋より100年古く歴史の重みも感じられます。


ヴェルター湖にあるグスタフ・マーラーの作曲小屋

美しいヴェルター湖を訪れた有名な音楽家の一人にグスタフ・マーラーがいます。
駅のバス停はBの11。平日でも2時間おきにしかないバスで20分ほど離れた
湖の街<マイアーニック>の水泳場(Strand Bad)で降ります。すぐ左にある看板の通りに、林の中を登ったり降りたり、15分もすると、仙人の修行場の様に隠れた場所に作曲小屋がぽつんと建っており、マーラ愛好家の為に今も保存されています。



ヨーロッパで活躍中の若きマーラーは、以前お話ししたアッター湖の目の前に、作曲小屋を持ち、大自然の中で作曲に励んでいました。30代後半ウィーンに活動の場が移ると大自然の中の作曲は、アッター湖からヴェルター胡に移ります。
<ベニスに死す>でお馴染みの交響曲5番もこちらで完成されました。
目の前にある高台のこの場所から、木々の間に美しい湖が顔を覗かせます。作曲小屋から出て来たマーラが、この湖に向かって歩いている姿が想像できますね。


クラーゲンフルトで生涯を閉じたマリアテレジアの娘マリア・アンナ

ハプスブルク家唯一の女性統治者マリア・テレジアには、16人の子供がいました。
末娘はフランスに嫁いだマリー・アントワネット。1番目と3番目の娘は産まれてすぐにこの世を去っているので、2番目のマリア・アンナ(1738-1789)が沢山の子供たちの中では長女のようなもの。
病気がちで母の結婚外交は叶わず、お気に入りの娘になることは出来ませんでしたが、父は良き理解者でした。
芸術を理解し、知性のあるマリア・アンナは現存する世界で一番古いシェーンブルン動物園の基礎を作り、自然史美術館の多くのコレクションを収集した才能豊かな父を手伝い意思を引き継ぎます。
母の死後、以前訪れ人々の暖かさに触れたマリア・アンナは、ウィーンを去りクラーゲンフルトで生涯を閉じます。マリア.アンナが過ごしたパレスは、現在も司教の居住地として残されています。


クラーゲンフルトは、美しいアーチ型の中庭を多く持つ古き美しい建物に、所々見え隠れするシンボルマークのドラゴン。
長く続き世界で中でヒットしたドラゴンの出てくるアメリカの人気ドラマ<Game of Thrones >の記憶も伴い、ドラゴンが、この街の塔の周りを大きな翼で飛んでいる様な気分にもなります。



帰り道に、ケルンテンのお水を購入し駅へ向かうはずが、誤った道へ進む所を止めたのは、
グスタフ・マーラー音楽大学から聞こえる楽器の音でした。
<そっちじゃないよ。>って、指揮棒で駅を指差すマーラーの顔が浮かんできましたか?