ヴァッハウ渓谷へアプリコット(杏)を買いに

2021/08/07

ヴッハウ 歳時記 雑記

オーストリアはアプリコット(杏Marille)のシーズンです。

夏の初めはイタリアなど暖かい外国産、だんだん地元産になりますが、その中でもドナウ川流域のヴァッハウ地方の伝統的な品種は、特別美味しく、ちょっとしたブランドです。

アプリコットの買い出しって、仰々しいけど何をするの?食べてもいいけど、ジャムも作るんです。わざわざ行くの?だってドライブできるから。

ここのアプリコットは、ど素人の私が始めてジャムを作っても、とってもおいしかったんです。それで毎年買いに行きます。

こちらでは、いちごジャムより、アプリコットのジャムの方が、ほんのちょっとポピュラーと思います。ザッハートルテやお菓子にもアプリコットジャムを使います。


ヴァッハウWachauはドナウ川でウィーンより上流、川がうまい具合にくねくね曲がり、切り立った岩山があり、その上に砦跡、なだらかな斜面に葡萄畑が広がり、ドナウ川で船下りをする、ご存知、一番景色がいい所です。葡萄の方もワインの特別な産地(たぶんオーストリアで一番有名)です。ヴァッハウは厳密には、上流がメルクMelkの少し下流から、ずっと下流のクレムスKremsまでの区間で、ユネスコの世界遺産です。


クレムスの近くのここで、いつもアプリコットを買います。

さぁ、こんどはドライブです。ドナウ川に沿って上流のヴァイセンキルヒェンWeissenkirchenまで。
街のシンボルは、そびえたつ教会Kircheで、街の名前も直訳は白い教会です。ここはサイクリングでも人気で、自転車乗りがたくさん来ていました。ヴッハウ渓谷は、川沿いのコースで高低差が少ないので、景色がよくて楽なコースなんです。が、まずは教会の足元(ホテル・レストランのキルヒェンヴィルトKirchenwird)で、お昼御飯です。
左は鹿(Rehノロジカ)のラグー、右は夏のきのこ(アイアーシュヴァンメルEierschwammerl)のクリーム煮。デザートは、なんといっても、アプリコットの季節ですから、
こちらの定番のアプリコットのお団子Marillenknödelと、おまけにアプリコットのシャーベット(このレストランのお勧めの組み合わせらしい)。

実は大きくてびっくり、シャーベットは手前にあるので大きく映っているだけで、お団子(クネーデルKnödel)の直径は8cmくらいあります。クネーデルは注文してから茹でる、暖かいお料理で、いろいろなバリエーションがあります。

一つの団子に一つのアプリコットが丸ごと入っています。切ると、あたったかいアプリコットが、とろ・ぽろり。

あれ、種がない?どうして?「そそかしい外国人が噛みついて、歯がかけないように」。へぇぇぇえ、でも、種がないとクネーデルの中でつぶれちゃう?「角砂糖を1個入れておけばいいのさ」。ほぉぉぉぉぉぉお。まぁ、皮もむいてある、丁寧ねぇ。さっき来た自転車の人が、一人でアプリコットのクネーデルを4個も頼んでいる!! ここが特別美味しいの知ってるのね。この人は他のお料理なしで、つるつるお団子を食べてしまいます。これが楽しみで走って来たんでしょう!!

今まで食べたアプリコットのクネーデルは、お皿にきれいに甘いソースが広げてありました。お団子自身は自然な味で特別は甘くないので、ソースをつけて食べる。でも、ここではそれがアプリコットのシャーベットで、これが暖かいお団子の横で少しずつ溶けて、冷たいソースになって、夏にはさわやかで、とても美味しい!!


初めはお団子は一人一個かと思ったら、標準オーストリア人並みに一人で2個食べたので、うれしい、美味しい、でもお腹いっぱい。それでは散歩に行きましょう。

もう、レストランの奥に教会がそびえています。古い堂々とした建物です。ここはお祈りの場所だけでなく、敵に襲われた時に、住人が立てこもって戦う砦でもある、珍しいタイプの教会(城砦教会)です。塔の日時計の下あたりを拡大しますね。
上がギザギザの厚い壁に、鍵穴のような穴がいくつもあります。昔はあそこから、弓を射るんです。日本の戦国時代のお城にも、そういう穴が開いていますよね。教会はしっかり建ててあるもので、壁も分厚い、町の城壁にもなって住人を守るんですね。

もっと歩きましょう。





ここにもアプリコットMarille、今度はジャムで売ってます。無人販売で、お金は真ん中の瓶に入れてってのタイプの様です。

このヴァイセンキルヒェンは、ヴァッハウの川下りの定期観光船からよく見えますが、なかなか寄らない街です。でも、時間があればきっと楽しい体験ができます。    井上 元子