水は生命の源です。
様々な理由から安全な水を手に入れるのが大変な地域がある一方で、
日本中安全な水道水が供給されています。
その日本の上をいく上質な水道水が供給されている都市、
そんな贅沢な都市のひとつがウィーンでしょう。
人口約190万を数える都市でありながら、水道水は「アルプスの天然水」。
ヨーロッパアルプスの東端になりますが、山地から水道橋を使って直引きの水です。
水質は硬水に分類されますが、おなかをこわすことはないでしょう。
夏でも冷たい水が、蛇口をひねれば出てきます。
ペットボトルの手軽さが広まった今、
今度は「限りある資源を大切に」と「自然保護、ゴミ減らし」キャンペーンです。
プラスチックやペットボトルは石油製品、
しかもポイ捨てする人がいるため(決してマネしないでくださいね!)
海洋汚染・海洋生物の危険にもつながり、輪をかけて悪者です。
かたや健康志向で一日あたり2リットルの水を飲むことが奨励されています。
さてどうしましょうか。
というより、水道水があるじゃん!
いいところに気が付きました。
ここまでが、長い長い前フリです・・・
以下本題
ミネラルウォーターがそんなに高いわけではありませんが、水道水はもっと安い、
容器だけ自分でリサイクル可能なものを用意してね、
ということで水道水を飲もうキャンペーンです。
ウィーンの
① 生活の質の高さの証明にもなるし
② 環境保護アピールにもなる
③ さらに降水量が少ない地域からの旅行客のアトラクション(?)にもなる
と良いことだらけ
ということでウィーン市内あちこちに仮設水飲み場を設置し始めました。
(ちゃんと上水道に接続しています。冬の間は撤去されます)
よく公園やショッピングセンターなどで見かける、
ボタンを押すと水が出、手を離すと水が止まるしくみのあれですね。
一部は噴霧機能までついています。
こんな姿をしています。
ウィーン中に 1000 台もあるようです。
ものすごい力の入れようです。 1000 台も設置・・・
さらに昨年からこのウォーターサーバーに名前をつけました。
恐れ入りました~
似たような「ブリュンヒルデ」Brünnhilde (*1) という名前を聞いたことのある人は
大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
ブリュンヒルデといえば、ワーグナーのオペラに出てくる
ワルキューレ・ブリュンヒルデです。
ゲルマン伝説に特に関心がなくても、ワルキューレ (*2) という言葉は
ご存知かもしれません。
歴史好きならヒトラー暗殺計画の「ワルキューレ作戦」(映画化されていますね)、
最近ではアニメ・タイトルや音楽ユニットの名前にも使われています。
ゲルマン伝説のブリュンヒルデ、名前の元の意味は「戦いの甲冑」ですが、
ここでは「泉」「井戸」を表すブルンネン Brunnen とかけ、言葉遊びをしています。
何だかこの水を飲むと防御力、免疫力がアップしそうですね。
次回ウィーンへお越しの際はぜひお試しください。
ただ当面は周囲の人から適切な距離を保つことに気を付ける必要があります。
補足
(*1) ブルンヒルデ Brunhilde(写真の水飲み場のものとは若干綴りが異なります)、
ブリュンヒルト Brünhild / Brynhild、等々その他にも似たバージョンがいくつもあります。
もとは古(北)ゲルマン語の「戦い用の甲冑」(Brünne 甲冑 + Hild 戦い)
からきていますが、時代や地域により若干綴り・発音が変化しています。
(*2) こちらもヴァルキューレ、ヴァルキュリャ等いくつかバージョンがあります。
戦場で生きる者と死ぬ者を定める役割のワルキューレ達、名前も「槍の戦い」を
はじめとして何だか恐ろしげな、強そうなものが多いです。
日本語では「戦乙女」のほうが広く知られているでしょうか。
大渕元子